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心臓血管外科

スタッフの紹介

診療科紹介

心臓血管外科の紹介 と 最近の手術治療の紹介
-- より安全な手術を目指した総合病院としての取り組み --

心臓血管外科 岡田正比呂

心臓血管外科では、心臓・大動脈疾患および末梢血管疾患に対する診断と手術治療にあたっています。4名の心臓血管外科専門医と修練医2名による6名の医師による診療体制となっています。スタッフは岡田(専門領域:成人心臓、血管外科)、中井(大動脈外科、血管外科、ステントグラフト)、立石(成人、小児心臓外科)、畝(成人心臓、大血管外科)の専門医4名と後期研修医の横田医師、宮本医師の2名、全員であらゆる領域の患者さんを担当し診療にあたっています。特に緊急手術に際しては循環器内科、麻酔科、中央手術部、救急部など多くのスタッフの協力のもとに夜間、土曜・日曜を問わず行える体制ができています。他院より依頼があった場合には心臓血管外科医同乗のもと当院救急車での患者さんのお迎えも開始し、一人でも多くの命をチーム一丸となって救いたいと思っています。

最近では高齢化に伴い、心臓だけが病気の患者さんは減り、脳神経疾患(脳梗塞、脳出血など)、呼吸器疾患(長年の喫煙、呼吸機能の低下、肺腫瘍術後など)、腎臓疾患(腎機能低下、透析患者)、糖尿病、泌尿器疾患(前立腺肥大や腫瘍など)、整形外科や耳鼻科眼科疾患にいたるまで他の病気を持たれている患者さんも多いです。私たちの強みは各科そろった総合病院ということであり、他疾患や術後のトラブルに対しても速やかに病院内の専門家で対応できます。産婦人科や小児科のスタッフも充実しており若い女性にも安心して受診していただけます。また、国立病院のため営利目的の不要な治療も行う必要がありません。

 

心臓弁膜症の手術

心臓弁膜症は近年非常に患者さんが増加している分野です。心雑音だけ指摘されている無症状のものから歩行時や階段の上り下りで息切れがするものまで様々です。どの段階で手術に踏み切るかサジ加減が難しいですが、過去の膨大なデータ研究により線引きがされており症状が出る前の手術が勧められるようになってきました。「大動脈弁の至適手術時期について」は欧米学会誌に発表も行っており手術時期の決定は当院でも得意としています(下記参照)。外来でご本人/ご家族と一緒にガイドライン(医師達の治療方針取り決め)や過去のデータを見ながら説明させていただきます。手術がまだ必要無い早すぎる段階での手術治療は絶対にお勧めしないように心掛け一緒に病気とお付き合いさせていただきたいと思っています。他院で無症状にも関わらず手術を勧められて迷われている方もどうぞご相談ください。

弁膜症手術の主流は昔まで弁置換術でしたが、僧帽弁において自己弁を温存する弁形成術が今は主流で行われています。向き不向きはありますが可能な場合は形成術をできるだけ行う方針としております。大動脈弁に対しても、向いている患者さんに対して自己弁温存手術(大動脈弁形成術)を行うようにしています。形成術後はワーファリンによる抗凝固療法(血がサラサラになる薬)が不要となるため、これらの手術術式を選択することで術後の内服薬剤をずいぶん減らすことができます。

人工弁置換術では機械弁か生体弁(ウシやブタからできている弁)の2種類から使用する弁を選ぶ必要があります。機械弁はワーファリンを一生涯飲む必要がありますが耐久性が高く比較的若い患者様に向いています。一方、生体弁はワーファリンを中止できるものの10~15年程度で壊れることが多く比較的高齢の患者さんに向いています。「生体弁がどのような患者さんにおいて耐久性が高いか(長持ちするか)」という研究結果を当院医師が欧米学会誌に発表しており、私たちが専門とする分野でもあります。弁選択も不安な場合には当院専門家にご相談ください(下記参照)。

最近では、比較的小さな傷で胸骨(胸の真ん中の板状の骨)をできるだけ切らない低侵襲手術(MICS: Minimally Invasive Cardiac Surgery)が広まってきています。向き不向きはありますが当院においても、内視鏡補助下に胸骨を全く切らないMICS を行っておりますので希望される方はご相談ください。



 

冠動脈バイパス手術

心臓表面を走る冠動脈が細くなったり詰まったりした場合に行う手術です。(狭心症や心筋梗塞に対するもの。)大切なことは多少時間をかけてでも長持ちするきれいなバイパスを作ることだと思い手術を行っています。

手術として人工心肺を使用した冠動脈バイパス手術(心臓を止めて行うもの)と人工心肺を使用しないオフポンプ冠動脈バイパス術(心臓が動いたまま行うもので少し難易度が高くなるもの)の2つがあります。高齢者やリスクの高い患者さんに対しては人工心肺を使用しないことで手術リスクが低くなるためオフポンプ冠動脈バイパス術が推奨されています。当院では心臓が動いたまま行うオフポンプ冠動脈バイパス術を標準的に行い、心停止した方が良いバイパスが作れると考えられる症例に対しては人工心肺を採用しています。術後の飲み薬や使用血管によりバイパスが長期間流れるかどうか決まる部分もあり注意深く使用血管や飲み薬を選んでいます(下記参照)。

複数のバイパスを置く冠動脈バイパス術において、2004年ごろより北米のオタワとニューヨークで胸骨を切らない低侵襲冠動脈バイパス術(MICS-CABG: Minimally Invasive Coronary Artery Bypass Grafting)が開始されました。畝医師は低侵襲冠動脈バイパス術を考案したオタワ大学Dr. Marc Ruelのもとで2年半の研修を行っており当院でも手術を行うことができます(下記参照)。ご興味のある患者さんはお気軽にご相談ください。



 

大血管手術

胸部大動脈瘤、胸部大動脈解離に対する手術も脳保護の進歩、人工血管の改良により安全に行われるようになってきました。救急体制が確立されて、緊急手術症例も増えてきています。ステントグラフト(血管内治療)が導入され、治療方法の選択肢も大きく広がりました。ステントグラフトは手術が低侵襲であり、従来手術(人工血管置換術)は長期的な手術効果が期待できるという、それぞれの長所(逆は、それぞれの短所となりうる)を持っています。患者さんの状態は千差万別なので、十分な説明の上、一人ひとりに合った治療法を選択しています。



 

肺動脈内膜摘除術

当院循環器科は、肺高血圧治療の分野で国際的にも有数な施設となっております。慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、当院でカテーテル治療が開発され、治療成績の向上が得られていますが従来は外科的血栓摘除術が治療の主体でした。当院でも手術が有効と判断された方に対して、米国カリフォルニア大学Madani先生の指導のもと、本手術を施行しています。

 

末梢血管手術

現在、慢性下肢虚血の原因は、ほとんどが閉塞性動脈硬化症ですが、この病気は全身の動脈硬化疾患で、特に冠動脈や頭頸部血管病変を合併することが稀ではありません。そこで、当院では造影CT検査、MRA、頸部エコー検査、冠動脈造影検査などを組み合わせて術前評価を行っております。

間歇性跛行(歩行で下肢の痛みなどが出現し、休むとおさまる)の患者さんは、本来下肢切断にいたる危険性は低いのですが、ご本人のご希望を踏まえ、運動療法、カテーテル治療、バイパス手術およびこれらの組み合わせから治療方法を選択しています。一方、重症虚血肢(安静にしていても下肢の痛みがある、または虚血性で潰瘍ができた)の患者さんは、下肢の切断を防ぐために早急に血行再建を必要とします。当院では、当科と循環器科のみならず、形成外科・整形外科などとの連携により治療を進めています。

 

下肢静脈瘤手術

侵襲の少ない麻酔、手術方法を選択しており、日帰り手術もしくは2-3日入院が可能となっています。

 

下肢静脈瘤の治療

従来は、逆流する表面の静脈を抜去するストリッピング手術を主に行っていましたが、平成28年から、ラジオ波による血管内焼灼術を導入し、適応がある患者さんではこれにより治療の低侵襲化を目指しています。高周波アブレーションカテーテルを下肢静脈瘤内に挿入し、カテーテルから放出される熱により、静脈壁を収縮させ閉塞させてしまう治療法です。外来でも治療を行う事ができ、局所麻酔、カテーテルを差し込む小さな傷口だけで済ませることがます。一方、本症は重症になれば、うっ滞性皮膚病変を伴うため、皮膚科、形成外科と密な連携をとり、診療を行っています。

心臓血管外科年次別手術件数
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
弁膜症
41
47
46
30
64
42
68
43
46
34
35
虚血性心疾患
59
61
46
38
67
56
69
40
34
26
25
先天性
3
2
4
7
5
4
5
3
3
7
2
その他開心術
18
8
2
12
8
1
26
15
25
9
6
胸部大動脈
20
17
17
22
30
35
28
13
30
13
18
腹部大動脈
33
23
31
31
38
37
21
33
29
39
29
末梢動脈
66
56
45
57
83
68
72
50
67
14
12
静脈瘤
85
78
102
103
78
91
88
52
45
18
26
その他
24
57
77
97
25
78
12
1
2
46
51
手術総数
349
346
370
397
398
412
389
250
281
206
204
 

心臓、血管領域でお困りの患者さんがおられましたら気軽に当院地域連携室もしくは当科スタッフに直接ご連絡ください。


 
お知らせ--
入院および入院予定の患者様へ--
 

当診療科では、「外科系の専門医制度と連携したデータベース事業」(NCD:National Clinical Database)、および「日本心臓血管外科手術データベース」(JACVSD:Japan Adult Cardiovascular Surgery Database) の趣旨に賛同し、これらの事業に参加しております。

 

外科系の専門医制度と連携したデータベース事業 (NCD)

日本では現在、多くの診療科領域において、どのような場所でどのような手術が、誰によって、どの程度の数が行われているかが、把握されていない状況です。外科関連の専門医の適正配置を考える上では、現状を把握することがなによりも重要です。外科医は、自ら実施したすべての手術をNCDのデータベースに登録します。NCDでは、患者さんに最善の医療を提供するため、これらのデータを分析・評価し、外科医療の現状を体系的に把握します。

(ホームページより抜粋 :http://www.ncd.or.jp/about/)

 

日本心臓血管外科手術データベース (JACVSD)

現在日本の心臓血管外科手術の結果に関する状況は全国規模では把握されておらず、どのような手術がどれくらいの危険性でなされているのか、また、手術前の状態が良好な方と重症な方とで手術の危険性にどの程度違いがあるのか、といった内容に関して全国規模の研究はなされておりません。そこで、心臓血管外科手術を受ける患者さんの手術前の医学的身体状況と行われた手術およびその結果を調査し、これをデータベースとして情報収集し全国的に集計することにより、日本の心臓血管外科学の進歩、ひいては国民全体の福祉健康の増進に寄与することを目的としています。

(ホームページより抜粋 :http://www.jacvsd.umin.jp/P3.html)

詳しくは、各ホームページをご覧ください。
 

上記に基づき、患者様のデータを各データベースに登録しております。何卒趣旨をご理解の上、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。なお、これら研究のデータ収集への同意は自由です。ご自身のデータの登録を望まれない方は、遠慮なくお申し出ください。登録から除外させていただきます。また、その場合にも診療、看護等の医療上の不利益を受けることは全くございません。

 
・特集診療科紹介 心臓血管外科(ザ・ジャーナルVol.13 No.1より抜粋)(PDF形式)
 

当院医師による主な研究発表

Une D, Mesana L, Chan V, et al. Clinical Impact of Changes in Left Ventricular Function After Aortic Valve Replacement: Analysis From 3112 Patients. Circulation. 2015;132(8):741-7
 術前に心機能低下した患者様に対する大動脈弁置換術の術後15年の成績を解析したもの。症状がひどくなる前や心拡大が起きる前に手術した方が予後がよいことを細かく報告。使用する人工弁は大きなものを入れた方が予後良好なことも報告。これらは手術を行う際の参考としています。
 
Une D, Ruel M, David TE. Twenty-year durability of the aortic Hancock II bioprosthesis in young patients: is it durable enough? Eur J Cardiothorac Surg. 2014 (5):825-30.
 60歳以下の患者様300名に生体弁大動脈弁置換術を行った後、20年間フォローした成績を解析。若い患者様、小さな人工弁を入れた場合に生体弁の耐久性が落ちることなどを報告。患者様と使用弁を相談する際に参考としています。
 
Ruel M, Une D, Bonatti J, McGinn JT. Minimally invasive coronary artery bypass grafting: is it time for the robot? Curr Opin Cardiol. 2013 (6):639-45.
 MICS-CABG を考案したオタワ大学のRuel 教授とニューヨーク スタティンアイランド大学のMcginn教授、ロボットCABGの第一人者 Bonatti 教授とともにMICS-CABGとロボットCABGの成績や適応、手術に向いている患者、今後の方向性を話し合い発表。
 
Une D, Kulik A, Voisine P, Le May M, Ruel M. Correlates of saphenous vein graft hyperplasia and occlusion 1 year after coronary artery bypass grafting: analysis from the CASCADE randomized trial. Circulation. 2013;128(11 Suppl 1):S213-8.
 足の静脈を使用したバイパスが長持ちするための因子を解析。太い静脈、右冠動脈へのバイパスなどが危険因子であり、スタチン(コレステロール治療薬)やβブロッカー(心臓への薬)によりバイパスが長持ちすることを報告。治療後の内服薬処方の参考としています。
 
※当院での修練医募集、研修医募集