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脳神経外科と癌

脳神経外科で取り扱う腫瘍、特に頭蓋骨の中にできる腫瘍を一般に「脳腫瘍」と呼んでいます。脳腫瘍にももちろん悪性もあれば良性のものもあり、悪性のものをその名のとおり「悪性脳腫瘍」、良性のものを「良性脳腫瘍」といいます。脳以外の代表的な悪性腫瘍として「肺がん」「胃がん」「乳がん」などをよく耳にされると思いますが、そもそも「癌(がん)」とは、人体の上皮細胞から発生した悪性の腫瘍のことをいいます。体表をおおう皮膚はもちろんのこと、消化管、呼吸器、生殖器の粘膜や肝臓、腎臓などの分泌腺組織を構成する細胞群も上皮細胞のグループです。したがって、上皮細胞グループではない脳、脊髄などの神経組織から発生する悪性の腫瘍は「脳がん」とはいわず「悪性脳腫瘍」というのです。骨や血液の細胞から発生する悪性腫瘍をそれぞれ「骨肉腫」「白血病」というのも同じ理由です。
脳腫瘍はいわゆる「がん」と異なり、ごく一部のものを除いて他の臓器やリンパ節への転移はありません。ただ悪性脳腫瘍は転移しませんが周囲の細胞の間に四方八方しみ込むように侵入し成長していきます。脳組織にはそれぞれの場所に重要な機能が存在するため、そこに腫瘍細胞があるからといって周囲の組織を余分に大きく摘出することができません。したがって手術で悪性脳腫瘍を完全に切除することは非常に難しいのです。また脳には触るだけで生命にかかわるような、いわば触れてはいけないアンタッチャブルな部位があります。いくら性質が良性でも、これら脳の大事な場所にできた腫瘍はやはり治療が困難であるといえます。

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悪性脳腫瘍と転移性脳腫瘍

神経組織から発生した脳腫瘍にも良性から悪性のものまであるといいましたが、頭蓋内にできる悪性腫瘍の中に、他臓器にできたがん細胞が元の場所から転移して発育していくものがあります。これが転移性脳腫瘍で、日本では肺がんの転移が最も多く、次いで消化器がん(大腸がん、胃がん等)、乳がん、泌尿器がん(腎がん、膀胱がん)などの転移があります。転移性脳腫瘍の4割程度は脳のいろいろな部位に複数できる多発性で、転移病巣が多ければ手術による切除は不可能となりますが、放射線治療などの他の治療法の選択が可能となります。

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脳腫瘍の症状

1.頭蓋内圧亢進症状
脳は頭蓋骨という硬い骨で囲まれた空間の中にあります。したがって脳腫瘍が成長増大していくにつれて頭蓋骨の内部の圧力が上昇し、さまざまな症状が現れます。これを頭蓋内圧亢進症状といい、代表的な症状は頭痛、嘔吐(吐き気)です。この状態が長く続くと眼が見えにくくなったり意識が悪くなったりし、ついには生命にもかかわってきます。
2.脳局所症状
脳にはそれぞれの部位にそれぞれ決まった機能があることが知られています。例えば、右利きの人の左脳の前頭部や側頭部には言葉の中枢が存在しています。この場所がダメージを受けると、言葉がしゃべられなくなったり(呂律が回らなくなるのとは別)、言葉を理解できなくなったりします。他にも手足の運動や体の感覚などさまざまな機能が脳のいろいろな場所に存在します。したがって腫瘍や出血などの病巣ができると、その場所に応じたさまざまな症状が現れてくるのです。
3.てんかん発作
脳腫瘍の患者さんの3人に1人はてんかん発作を起こすといわれています。てんかんは子供の病気のように思われる方も多いと思いますが、成人になって初めててんかん発作が起こる場合は脳腫瘍の可能性も考えておかなくてはいけません。脳腫瘍の場合のてんかん発作は「大発作(全身けいれんをおこすもの)」が多いですが、一瞬フーッと意識を失うようなものもあります。

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治療

悪性脳腫瘍の治療はできる限り外科的に多く切除することが原則ですが、前述のように脳にはどうしても触れることのできない場所があったり、周囲の脳組織にしみ込むように成長する腫瘍があったりで、100%切除することが難しい場合があります。そのような場合には術後に放射線照射を行ったり、化学療法(抗がん剤)を行ったりすることにより再発を遅らせ、生存期間を延長することが可能です。腫瘍の種類、患者さんの年齢等によりそれぞれ治療方針が異なりますので詳しくは医師にご相談ください。