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陰茎がんに関して

陰茎がんは、陰茎に発生する極めてまれながんで、わが国では人口10万人当たりの発生率は0.4~0.5と1名未満の発生率で、死亡率は0.1程度です。年齢別にみた罹患(りかん)率は、60歳から80歳で高く、65歳から70歳にピークがあります。一方で陰茎がんの19%は40歳未満であり、7%は30歳未満に見られています。国内の調査では、自覚症状の発現から受診までの期間は8日~最長8年までと幅が広く、6ヶ月以内に医療機関を受診した症例が53%と半数を占めたが、一方で1年以上受診が遅れた症例が22%であったとの報告があります。罹患率の国際比較では、日本は欧米に比べて低い傾向があります。

当院での症例数

当院でも年間1人程度とまれな疾患です。

陰茎がんは、新生児期に包皮切除を行う習慣のある地域では発生率が低いことから、包茎、亀頭包皮炎、生殖器の不衛生がリスク要因ではないかと考えられています。梅毒や尖圭コンジロームなどの性感染症や、性的パートナーが多いこと、また、陰茎がんの男性を夫に持つ女性では子宮頸がんのリスクが高くなることから、ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)感染もリスク要因の候補に挙げられています。その他、光化学療法PUVA(ソラレン8-methoxypsoralen+UV-A)を受けている乾癬(かんせん)患者でリスクの上昇が報告されていて、紫外線もリスク要因となる可能性が指摘されています。

症状

陰茎がんは、痛みを伴わないのが普通です。がんはまず陰茎の皮膚から発生しますが、進行すると海綿体や尿道にも浸潤(しんじゅん:がんが周囲に広がること)し、排尿が困難になることがあります。がんが大きくなると潰瘍(かいよう)を形成したり、がんが崩れて出血することがあります。また、陰茎がんは鼠径部(そけいぶ)と呼ばれる大腿のつけ根の部分のリンパ節に転移しやすいので、進行すると鼠径部のリンパ節をかたく触れるようになります。これがさらに大きくなると、リンパの流れが悪くなって、足のむくみが出現することがあります。がんの発生場所のため、医師の診察を受けるのが遅れ、がんの早期発見の機会を逃して手遅れとなることが多いので、自覚症状があったらすぐに診察を受けることが大切です。

診断

肉眼的に見て診断がつく場合がほとんどです。しかし、確定診断のためには、局部麻酔をして病変部の一部を切除して顕微鏡で検査する(生検)か、病変部をこすってはがれた細胞を顕微鏡で調べる検査(細胞診)が必要です。陰茎によくみられる他の疾患、特に尖圭(せんけい)コンジローマという病気がありますが、これが大きくなると陰茎がんとの鑑別がやや難しくなるので、これらの検査が必要です。

その他に最も転移しやすい鼠径部のリンパ節の触診も重要です。

がんであることがわかったら他のがんと同様、胸部X線撮影、腹部のCT、エコーなどで他臓器に転移がないかを確かめる必要があります。

病期

T:腫瘍の広がり

Tis 上皮内がん
Ta 非浸潤がん
T1a リンパ管浸潤なくがん細胞の悪性度が低いもの(G1-G2)
T1b リンパ管浸潤がある
もしくはがん細胞の悪性度が高いもの(G3)
T2 亀頭部に限局
T3 尿道へ浸潤
T4 隣接臓器へ浸潤

N:リンパ節転移

N0 リンパ節転移なし
N1 可動性のある片側の鼠径リンパ節転移が1個まで
N2 可動性のある鼠径リンパ節転移が片側に2個以上もしくは両側に存在する
N3 可動性のないリンパ節転移もしくは骨盤内リンパ節転移あり

M:遠隔転移

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

上記をふまえて陰茎がんは以下の病期に分類されています。

0期 TisN0M0、TaN0M0
I期 T1aN0M0
II期 T1bN0M0、T2N0M0、T3N0M0
IIIA期 T1-3N1M0
IIIB期 T1-3N2M0
IV期 T4、N3、M1いずれかひとつでもを満たす症例

治療

陰茎がんの治療は陰茎原発病変とリンパ節転移に分けて考える必要があります。

1)陰茎原発病変に対する治療

Tis、Ta、T1a

陰茎組織や機能の温存を目的とした陰茎温存療法が適用可能です。陰茎温存療法には外用療法、レーザー療法、環状切除術、局所切除術、または亀頭切除術などがありますが、局所再発率が高いことが問題となります。

  • 保存的治療後の局所再発
  • 再発病変が小さい場合 陰茎温存を含めた追加切除術
  • 再発病変が大きい場合 陰茎部分切除術または陰茎全摘除術
T1b、T2

亀頭全切除術、陰茎部分切除術

T3

陰茎全摘除術+会陰部尿道形成術

T4

術前化学療法の後、治療効果のあった症例に対して手術療法、外部照射

放射線治療

亀頭部や冠状溝に限局した4cm以下のT1-T2に対する臓器温存治療。陰茎のかたちをある程度保てることが利点ではありますが、治癒する確率は手術に比べると落ちます。ただし、I期では手術と比較し、成績はほとんどかわりません。治療後に陰茎の変形や、尿道の狭窄(きょうさく)をきたすことがあります。転移があると疼痛などの症状があらわれるため、その対策として放射線療法が選択されることがあります。

全身化学療法

術前化学療法や進行例や転移症例

2)リンパ節転移に対する治療

触知可能なリンパ節転移あり
  • 生検陽性:陽性側の鼠径リンパ節郭清
  • 生検陰性:再生検またはリンパ節切除 陰性なら経過観察
2個以上の鼠径リンパ節転移
  • 骨盤リンパ節郭清
リンパ節郭清で2個以上のリンパ節転移ある場合(N2,N3)
  • 術後化学療法
可動性のない鼠径リンパ節または所属リンパ節への再発
  • 術前化学療法

3)化学療法

転移が認められるような陰茎がんは、抗がん剤治療の対象になります。シスプラチン、メソトレキセート、ブレオマイシンの併用療法がよく用いられます。また、II期、III期において、手術の前後に化学療法を併用し、手術成績の向上をはかる試みもされてます。

生存率

がんが限局性である場合(I、II期)の5年生存率は90%、III期では30%です。IV期では、予後は大変厳しいといわざるを得ません。ただし、これらの数値はたくさんの患者さんの平均的な統計学的な数値であり、あくまでその傾向を示すもので、個々の患者さんにあてはまるものではありません。