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1.腎盂尿管癌とは

腎盂(じんう)は腎臓の一部で、尿管は腎臓と膀胱(ぼうこう)をつないでいる長い管のことです。どちらも、腎臓でつくられた尿を集めて膀胱に運ぶ働きをしており、腎臓と同じように左右に1つずつあります。腎盂と尿管は上部尿路と呼ばれ、ここにできるがんは「腎盂尿管がん」という1つのグループとして扱われます。治療法にもあまり差がないために、両方をまとめて考えることが多いのです。腎盂から尿管、膀胱、尿道の一部へとつながる尿路の内側は尿路上皮と呼ばれる粘膜でできています。この細胞から発生するがんを尿路上皮癌といい、腎盂尿管がんのほとんどを占めます。腎盂は腎臓の一部ですが、腎細胞がんは尿路上皮癌ではなく腎盂尿管がんとは性質が違うので、別のグループになっています。腎盂尿管がんにかかる率=罹患率(りかんりつ)は50歳代後半以降に増加し始める傾向にあり、男性に多いがんです。発生の危険要因として喫煙、フェナセチン含有鎮痛剤などが明らかになっています。腎盂尿管がんで最も多い症状は、肉眼でもわかる血尿です。

2.検査と診断

1)膀胱鏡検査

膀胱鏡(膀胱の内視鏡)を尿道から膀胱へ挿入します。腎盂尿管がんよりも膀胱がんのほうが発生頻度は高いので、まず膀胱がんを疑って検査します。膀胱内にがんがなければ、左右の尿管口から出血がないかを確認します。痛みが少ない軟性膀胱鏡(ファイバースコープ)を用いて行います。

2)尿細胞診検査:

尿にがん細胞が出ていないかどうかを確認するために行います。がんがあっても尿細胞診に異常を認めないこともあり、注意が必要です。

3)超音波検査:

腎臓のはれ(水腎症)を確認します。尿管がんが尿管をふさいでいると腎臓がはれてくることが多いので,超音波検査で簡単に確認できます。

4)CT・MRI

性能があがってきており,以前では指摘できなかった大きさの腎盂癌や尿管癌がわかるようになってきました。癌が腎盂や尿管の外に進行しているかどうかや,転移の有無を確認します。

5)尿路造影検査(IVP=排泄性腎盂造影,RP=逆行性尿路造影)

造影剤を点滴すると5分から10分くらいで尿中に造影剤が流れてきますので,何回かX線撮影を行い,尿の流れの異常を確認します(IVP)。さらに詳しい検査を行うために、腎盂尿管がんが疑われた場合、逆行性腎盂造影(RP)が行われることがあります。膀胱鏡を尿道から入れ、膀胱内の尿管口からカテーテル(細い管)を挿入します。尿を採取後、このカテーテルから造影剤を注入してX線撮影を行い、腎盂や尿管の形状を観察します。排泄性腎盂造影ではよく見えなかった部位や、そのほかの異常を明らかにすることができます。

6)尿管鏡検査

腎盂尿管がんが疑われても、これまでの検査で診断するには十分な所見(がんの証拠)が得られなかった場合、尿管鏡検査が行われることがあります。入院の上,麻酔をして行います。まず尿道から膀胱内に内視鏡を入れ、尿管や腎盂の様子を観察して,異常が疑われる部分を採取すること(生検)も可能です。

3.病期(ステージ,進行度)

病期によって治療方法を選択しますが、必ずしも治療前のステージが正しいとは限りません。手術を行って摘出した組織を顕微鏡で調べる組織検査の結果が、術前の画像診断と必ずしも一致しないこともあるからです。その場合は、組織検査の結果に従ってその後の治療を選択します。

0期 がんが腎盂・尿管の粘膜にとどまっている。
I期 がんが腎盂・尿管の粘膜下の結合組織に広がっている。
II期 がんが腎盂・尿管の粘膜を越えて広がり、筋肉の層に及んでいる。
III期 がんが腎盂・尿管の筋肉の層を越えて、外側の組織まで及んでいる。
IV期 がんが隣接する臓器または、腎臓を越えてまわりの脂肪組織まで広がっている。
または,リンパ節や別の臓器に転移がある。

4.治療

1)手術

腎盂尿管がんの治療は、手術が中心になります。0,I,II,III期までは手術を行います。転移がなければ基本的に手術を行います。尿路上皮癌は多発・再発するのが特徴なので、がんのある部分のみの切除は一般に行われません。

当院での手術の方法
ミニマム創腎尿管全摘除術および膀胱部分切除術

腎臓の位置に近い側腹部(横腹)に6~8cmほど皮膚を切開し,腎臓を周りのそしきからわけて分離します("剥離(はくり)"といいます)。腎盂癌や上~中部尿管癌の場合にはその創からいったん腎を摘出します。続いて下腹部に4~6cmの皮膚を切開し,下部尿管を摘出します。下部に尿管癌がある場合には,腎・尿管をひとかたまりにして摘出します。腎臓は左右に1つずつあり、片方の腎臓を摘出してももう一方の腎臓が正常に機能すれば生活上の制限はあまりなく、人工透析が必要になることはまれです。

ミニマム創手術(腹腔鏡補助下小切開手術)について

近年、体の負担が少ない手術として「ミニマム創手術(正式名:腹腔鏡補助下小切開手術)」が広まりつつあります。従来の開腹手術は約15~20cmの創、腹腔鏡手術は径1cm大の穴を3~4か所で行うのに対し、小切開手術は5~8cmの創1つで手術を行うものです。

  • 従来の開腹手術に比べると、痛みが少なく回復は早く、感染症も少ないです。
  • 創の大きさ以外は従来の開腹手術と全く同様の手順、技術で行うのでこれまでの開腹手術の経験を生かした安全な手術が可能です。
  • 腹腔鏡手術の弱点に、"組織を縫合したり糸をしばる操作が難しい"、"不慮の出血への対処が難しい"、という点がありますが、小切開手術ではどちらも問題ありません。
  • 腹腔鏡手術では使い捨ての高価な道具や、二酸化炭素でおなかをふくらませる必要がありますが、小切開手術ではどちらも必要ありません。
  • 肉眼(立体視、広い視野)と内視鏡モニター(拡大視)の両方で患部を見ることができるのも大きなメリットの一つです。

2)抗がん剤治療

術前の画像診断によりがんの浸潤が認められた場合や手術後の組織検査の結果によっては、手術前後に抗がん剤治療を行うことがあります。また、すでにリンパ節や別の臓器に転移している場合(IV期)は、数種類の抗がん剤を組み合わせて使う多剤併用化学療法が試みられます。このような転移例でも抗がん剤治療の効果をみて、手術や放射線治療を追加することもあります。抗がん剤の効果と副作用は個人差があるため、効果と副作用をみながら行います。

3)BCG(ウシ型弱毒結核菌)注入療法

腎盂尿管の上皮内癌の場合には、腎臓を温存するために、結核の薬として使われるBCGをカテーテルで腎盂尿管に注入する方法が選択されることがあります。また、腎機能が悪く腎臓の摘出が行えない場合、表在がんの治療や再発予防のためにBCGを使用する場合もあります。(上皮内癌:画像や内視鏡検査ではっきりと確認できず,組織検査でやっとわかるくらいの小さな癌)

5.当院のデータ

1)手術統計

腎尿管全摘除術

2)病期別割合

腎盂・尿管の悪性腫瘍
腎盂・尿管の悪性腫瘍
腎盂・尿管の悪性腫瘍ー男女別
腎盂・尿管の悪性腫瘍ー男女別
腎盂・尿管の悪性新生物-男女別年齢別分布 2008-2013
腎盂・尿管の悪性新生物-男女別年齢別分布 2008-2013
2008-2011腎盂・尿管がんの病期分類 (UICC第6版を使用)
2008-2011腎盂・尿管がんの病期分類 (UICC第6版を使用)
2012-2013腎盂・尿管がんの病期分類 (UICC第7版を使用)
2012-2013腎盂・尿管がんの病期分類 (UICC第7版を使用)