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膀胱と膀胱がんについて

膀胱は腎臓で作られ尿管を通って運ばれてきた尿を一時的にためておく袋の役割をもつ臓器です。内側は移行上皮という細胞という細胞でおおわれています。
膀胱がんのほとんどは、この移行上皮の細胞ががん化したものです。

当院での膀胱の悪性腫瘍
当院での膀胱悪性新生物-男女別年齢別分布2008-2013

膀胱がんにかかる率(罹患りかん率)は60歳以上に増加し始める傾向にあり、男性に多いがんです。発生の危険要因として喫煙が明らかになっています。
膀胱がんは大きく分けると、①表在性膀胱がん②浸潤性膀胱がん③上皮内がんの3つのタイプに分けられます。それぞれ性格がかなり異なっており、治療法も違います。

①表在性膀胱がん

膀胱表面の粘膜にとどまっており、膀胱の筋層には広がっていない根の浅いがんのことを表在性膀胱がんといいます。イソギンチャクのような形をしていることが多く、膀胱の内側の空洞に向かって出ています。転移することはあまりなく、膀胱がんの多くがこのタイプです。

②浸潤性膀胱がん

膀胱筋層まで広がった膀胱がんを浸潤性膀胱がんといいます。がんの表面がきれいなカリフラワー状ではないことが多いです。こぶのように盛り上がったものから、膀胱の粘膜の下に根を張るように広がって発育し、粘膜がむくんで見えるものまでさまざまです。膀胱の壁から外側に広がりやすく、転移もしやすいがんです。

③上皮内がん

がんが膀胱の表面に隆起せず、粘膜に沿って悪性度の高いがん細胞がばらまかれた状態になっているのが、上皮内がんです。上皮内がんはほかのがん種では早期のがんに分類されることもありますが、膀胱の場合は悪性度が高く、しっかり治療しなければならないがんです。
膀胱がんの最初の症状としていちばん多くみられるのは、肉眼でもわかる血尿です。数日で突然止まることもあります。排尿時に痛みを感じたり、下腹部に痛みが起こることもあります。膀胱炎と似た症状ですが、抗生物質を飲んでもなかなか治らないのが特徴です。がんが広がり尿管口をふさぐことで尿がうっ滞して腎が腫れるために背中の鈍い痛みが現れることもあります。早期の表在性がんは、多くの場合、治癒が期待できます。浸潤性のがんの治療成績も向上してきています。症状が続くときには早めに受診することが膀胱がんの早期発見につながります。

検査と診断

膀胱がんが疑われると、膀胱鏡検査、尿細胞診検査、超音波(エコー)検査を行います。また、がんの広がりを調べる検査として、CT、 胸部X線撮影、骨シンチグラフィー、MRIなどを行います。

①膀胱鏡検査(内視鏡検査)

膀胱がんは膀胱鏡検査によってほとんどが診断できます。先端にカメラの付いた細い管(膀胱鏡)を尿道から膀胱に挿入して、がんの有無を観察します。がんがある場所、大きさ、数、形状などがわかります。

②尿細胞診検査

尿にがん細胞が出ているか顕微鏡で確認する検査です。しかし、膀胱がんがあっても尿細胞診に異常を認めないこともあり、尿細胞診の結果が陰性であるからといってがんがないとはいえません。

③胸部X線撮影、CT、MRI、骨シンチグラフィー

治療前に転移や周辺の臓器へのがんの広がりを調べるために行います。表在性膀胱がんの場合は 転移したり局所に広がったりすることは少ないので、必ずしも全身の転移を調べる必 要はありません。

④膀胱粘膜生検

膀胱がんの確定診断のために、膀胱粘膜を採取して顕微鏡で見てがん細胞があるか確認します。下半身麻酔をして、病変部を内視鏡手術で切除することが必要です。がん細胞がある場合には、病期と異型度を判定します。膀胱粘膜生検では、正常にみえる膀胱粘膜も一部採取して検査をすることがあります。表在性のがんであれば経尿道的膀胱腫瘍切除術でがん全体を摘出できることが多く、検査(生検)と治療を兼ねることになります。

病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉です。病期は、がんがどのくらい深く入りこんでいるか(深達度:Tis〜T4)、リンパ節や別の臓器への転移があるかどうかで決まります。膀胱がんでは前述した異型度も問題になります。画像診断と膀胱粘膜生検による組織検査 の結果に基づいて診断した病期と異型度によって治療方法が決まっていきます。

転移

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで成長したものをいいます。がんを手術で全部切除できたようにみえても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している可能性があり、手術した時点では見つけられなくても、時間がたってから転移として見つかることがあります。

再発

再発とは、治療により目に見える大きさのがんがなくなった後、再びがんが出現することをいいます。膀胱がんは、何度も再発することが特徴です。特に、経尿道的膀胱腫瘍切除術で膀胱がんを切除した場合は、膀胱粘膜の多くの部分が残っているので膀胱内に再発する可能性が常にあります。膀胱を摘出した場合でも、腎盂や尿管といった、同じ性質の粘膜がおおっている部位にも再発のリスクがあります。定期的な通院で膀胱鏡や尿の細胞診を行いチェックします。

ステージ 状態
ステージ0 がんが粘膜や上皮内に留まっている
ステージI がんが粘膜層を越えて浸潤しているが、筋層にまでは及んでいない
ステージII がんが筋層までで留まっている
ステージIII がんが筋層を越えている
ステージIV 膀胱にできたがんが、周辺の臓器(腎臓・前立腺・子宮など)へ転移している(IVa期)
膀胱から遠い臓器へ遠隔転移している(IVb期)
当院での膀胱がんの病期分類

膀胱がんの治療

膀胱がんの治療としては手術、放射線療法、化学療法、BCGあるいは抗がん剤の膀胱内注入療法がありますが、病期と異型度に基づいて治療方法が決まります。

膀胱がんの臨床病期と治療

手術

転移がなければ基本的に手術を行います。病期により内視鏡で行う手術(①、②)と、開腹手術(③、④、⑤)

①経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR−Bt)

表在性の膀胱がんにはこの術式が一般に行われます。腰椎麻酔(下半身麻酔)を行って、膀胱内を内視鏡で確認しながら高周波電気メスでがんを切除します。

②経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術(TUR-BO)

当院では、再発の危険性をより少なくするため、また、より正確な深達度、病変範囲の判定のために経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術(TUR-BO)を積極的に行っています。

③膀胱全摘除術

がんが膀胱周囲に広がりやすい浸潤性の膀胱がんに対する治療はTUR−Btでは不十分であるため、膀胱と、がんに侵されているリンパ節(骨盤内リンパ節郭清)と隣接する臓器を摘出します。表在性がんが膀胱の広範囲にあり、ほかの治療でコントロールできない場合もこの術式が選ばれることがあります。男性では前立腺と精嚢と尿道、女性では子宮と卵巣、腟の一部、尿道をひとかたまりとして摘出します。

*尿路変向(変更)術

膀胱を摘出すると「尿をためておく袋」がなくなります。従って、尿の出口を新たにつくる尿路変向(変更)術を行います。方法は、主に次の3つがあり、当院では患者様の病状と希望をふまえて選択し行っております。

ⅰ)回腸導管造設術
回腸(小腸の一部)を20㎝ほど切り取り、これに左右の尿管をつなぎ、尿を導く管(導管)にします。この導管の一方の端は閉じて、もう一方を腹部の右側の皮膚に縫いつけて尿を出す出口にします。尿を運ぶ人工肛門のようなものであり、これをストーマと呼びます。
ⅱ)新膀胱造設術
小腸を縫いあわせて袋をつくり、これを尿道につなぎ膀胱の代わりとして用います。ストーマはなく、手術前と同じように尿道から尿を出すことができます。本当の膀胱ほどではありませが、排尿機能が残るので、尿道を摘出する必要がないときに考慮する方法です。ただし、女性では術後の排尿機能が安定しないことが多く、術式を選択する際には注意が必要です。また、膀胱がんは尿道にがんが再発することがあるので、その危険が高いと判断されたときはこの方法は使えません
ⅲ)尿管皮膚瘻
手術の方法が単純で、患者さんへの負担がいちばん少ない尿路変向術です。尿管を切断して、直接皮膚に縫いつけます。尿を出すためのストーマをつくる必要があります。ただし、合併症として尿が常に皮膚に付着する影響でストーマ周囲皮膚炎などが起こることもあり、また尿路閉塞をきたしカテーテル(細い管)を体内にいれておかなければならない場合もあります。

放射線療法

高エネルギーのX線を照射してがん細胞にダメージを与えてがんを小さくするのが放射線療法です。がんによる痛みなどの不快な症状を緩和したり、転移したがんをコントロールすることを目的に行うこともあります。膀胱がんでは、一般的に体の外から放射線を照射します。基本的に浸潤性がんが適応になります。また、患者さんの希望によっては膀胱を摘出せずに放射線治療と抗がん剤治療の併用を行う場合もあります。手術が不可能な場合や、手術前後の補助療法として行われることもあります。
副作用は、放射線が照射された部位によって変わってきます。照射部位の出血や炎症により嘔吐、下痢、下血、頻尿、血尿などのほかに倦怠感などもあり個人によって程度が異なります。症状が強い場合は、症状を和らげる治療も並行して行います。

化学療法

リンパ節や別の臓器に転移している場合は、点滴で全身に薬を効かせる抗がん剤治療を行います。通常、2種類以上の抗がん剤を組み合わせた多剤併用化学療法が行われます。転移のない膀胱がんでも、筋肉の層を越えてがんが広がっているステージIII以上の場合には、術後の再発や遠隔転移の予防のために、術前あるいは術後に抗がん剤治療が追加されることもあります。
副作用としては、吐き気、倦怠感以外に脱毛や口内炎、下痢、さらに自覚症状としては無症状ですが血液の成分が減少し、風邪をひきやすくなったり、出血しやすくなったりします。現在では、そういった副作用を軽くする治療も発展しており、化学療法と並行して行っております。

BCG

膀胱内に上皮内がんや悪性度の高い表在性がんがあるときは、BCGを膀胱内に注入することが多いです。その他の表在性がんには抗がん剤を膀胱内に注入することがあります。外来で行うことも可能です。ただし、筋層に広がったがんに対しては効果が期待できません。経尿道的膀胱腫瘍切除術を行ったあとに何度も再発するような膀胱がんに対して、再発予防にこれらの注入療法が行われることもあります。

治療後の経過観察

治療を行った後の体調確認のため、また再発の有無を確認するために定期的に通院します。再発の危険度が高いほど頻繁、かつ長期的に通院することになります。膀胱を摘出して尿路変向術を受けた方は、回腸導管や新膀胱などがきちんと機能しているかどうか、腎障害が出てきていないかなどのチェックも必要になります。また、手術後にカテーテルを抜いて新しい排尿管理法を習得するために、排尿リハビリテーションを行う必要があります。